刑事事件における弁護士委任のタイミング

約30年前の話です。私は会社の背任トラブルに関与したという事で、逮捕・勾留・裁判を体験しました。その時の体験談です。

当時、一介の管理職であった私は突然降ってわいた「まさかのトラブル」に困惑しつつも、自分は上司の指示に従ったまでのことで、自分に「非」は全くないと確信しており、会社との話し合いの中でもその旨を押し通していました。
ところがその意に反して事態は自分がトラブルの中心人物のように流れていき、ついには「告訴」という最悪の状況まで行きつきました。さすがに事がここに及ぶと自分ひとりで身を守ることは無理と思い、自宅近くの弁護士事務所を訪れました。私は、トラブルの一連の流れや自分の主張を述べ、なんとか和解へ向けてお力を貸してほしいことを伝えましたが、弁護士としては、すでに事が「告訴」にまで及んでいる以上、今、引き受けても「起訴」、「裁判」を想定した弁護活動が中心となるがそれでもいいかということでした。もちろん、「被告人」となるまでに示談による「告訴取り下げ」の交渉は弁護人として当然行うと言って頂いたのですが、その場の雰囲気で、「告訴取り下げ」の可能性は極めて低いというのは素人の私でもわかりました。それでも、私は「藁をもすがる思い」で、「委任契約」を結びました。
結果としては、「起訴」となり「裁判」、そして「有罪判決」(執行猶予付)となりました。それ故に、周囲からは「国選弁護人」でよかったのではという声もありましたが、それは結果論であって、私としては、わずかでも残された和解という望みに賭けての決断であったので、後悔はしておりません。ただ如何せん、「告訴」に至るまでに相談をしていればまた違った結果となったのではと、少し反省をしています。なぜなら、弁護士曰く、訴える側は「告訴」の段階では、確実に有罪にするべく、証拠や資料を完璧に準備しているので、よほどの被害弁済や慰謝料の支払いがなされない限り、和解には応じない、だから本来は「告訴」に至るまでに弁護士を通じて和解へもっていくのが望ましい順序との事でした。当時の私は自分の主張や考えを過信して、最悪の事態は全く想定しておらず、気がつけば「告訴」という事態に、あわてて弁護士事務所を訪れるような愚か者でした。今になって思えば「危機管理」が全くできていなかったということです。
以上、約30年前の失態を書かせてもらいました。